家族が死亡した際の香港における資産の取得方法
- Katherine Chan
- 7月1日
- 読了時間: 3分
更新日:9月2日
近年、香港に資産を保有する日本人は増加傾向で、保険契約、銀行預金、株式、ファンド持分、不動産などを所有するケースは珍しくありません。香港では相続税(Estate Duty)が課されていないため、これらの人にとっては大きなメリットとなります。
では、資産を持つ方が亡くなった場合、その家族が資産を取得するにはどうすればよいのでしょうか? 資産総額がHKD15万以上の場合、香港での遺産管理手続(Probate、以下プロベート)が必要になる可能性が高いです。このプロベートは、香港高等法院のProbate Registryで行われる正式な手続きで、遺言書がある場合は遺言検認(Grant of Probate)を、ない場合は遺言執行人の任命(Letters of Administration)を申請する必要があります。
ここで重要なのが被相続人(故人)の「住所(ドミサイル)」です。香港に住所がある日本人であれば、香港法が適用され、手続きは比較的スムーズです。一方、日本に住所がある場合、香港内の資産相続には日本法に基づく「相続人」や「相続割合」の判断が必要になるため、日本の弁護士による法的意見書(Legal Opinion)を香港の裁判所に提出するのが一般的です。
必要書類
ここで非常に重要になってくるのが日本の「戸籍謄本」です。これは被相続人の出生、死亡、申請人との関係(親子・兄弟等)を証明する書類で、香港での法的効力を持たせるために日本の公証人による認証と、外務省によるアポスティーユ(Apostille)を取得する必要があります。場合によっては、日本の領事館で家族関係証明書を取得することも可能です。
他には、死亡届も必要ですが、死亡診断書のみでは不十分ですので注意が必要です。これも公証とアポスティーユを取得しなければなりません。さらに遺言書がある場合、原本が日本語の場合は英訳も必要です。その他、故人および申請人のパスポートや身分証のほか、上記の通り日本の法律に基づき申請人に相続権があることを説明する弁護士による法的意見書などが挙げられます。
未成年の子供がいる場合
このケースでは、申請人による遺産管理に不備があった場合、補償責任を負う保証人(Surety)を求められることがあります。保証人は通常、財産的信用があり、香港に住んでいる必要があります。しかし、裁判所が条件に応じてこの要件を免除することもあり、適切な保証人が見つからない場合、保険会社が発行する保証債(Security Bond)等の提出を求められることがあります。
手続完了までの期間
筆者の経験上、日本人による香港でのプロベートには約1年半〜2年を要することが多く、その理由はProbate Registryの回答に時間がかかるためです。1通の書簡への返答に2〜3カ月を要することもあり、明らかに事務処理が追いついていない印象です。こうした遅延を防ぐには、事前に必要書類を整えておくことが大切です。
実務面では、香港の弁護士を代理人として任命するのが一般的です。これにより、日本から直接出向くことなく手続きが可能になります。弁護士は必要書類を裁判所に提出し、日本の弁護士と連携をしながら法的要件を満たすよう進めていきます。
遺言執行人の任命か遺言検認を取得
遺言執行人任命書か遺言検認が発行された後、申請人は香港に渡航し、銀行、保険会社、不動産登記所などを訪問して資産を取得することができます。
ケースにより異なる部分もありますが、香港の弁護士との連携により、スムーズかつ適切な遺産管理が可能になります。
免責事項
本記事は情報提供のみを目的としたものであり、法的アドバイスを提供するものではありません。ケースはそれぞれ異なりますので、個別の法的指針を得るためには、資格を有する弁護士に相談されることをお勧めします。この記事により、弁護士と依頼人の関係が成立するわけではありません。

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