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浮動担保(Floating Charge)を重大な契約違反とする

  • Katherine Chan
  • 2023年11月1日
  • 読了時間: 3分

事例概要

世界的に有名な日本の飲食ブランドが、香港でフランチャイズ展開を行った。香港のフランチャイジーはブランド、運営システム、レシピ、商標の使用権を付与されていた。


事業拡大のため、フランチャイジーは銀行から1,500万香港ドルを借入れ、事業資産(設備、在庫、売掛金など)に floating charge(浮動担保権)を設定した。


契約条項には以下が記載されていた:

“The Franchisee shall not create any charge or encumbrance without the agreement of the Franchisor.”(フランチャイザーの同意なしに担保や負担を設定してはならない。)


本社は通知を受けておらず、定期的なデューデリジェンスで発見後、契約違反を理由に契約を解除した。


法的問題と結果

この条項は重要資産への無断担保を防ぐ目的だったが、曖昧で実効性を欠いた。

• 書面同意が不要とされ、「agreement」の解釈が曖昧。

• 違反時の結果が規定されず、執行力が弱い。

• floating charge への言及がなく、範囲の広さと不可視性がリスク要因。


香港法では、Companies Registry に登記された floating charge は第三者—including the franchisor—に対抗力を持ち、契約終了後も効力を維持する。銀行は善意の貸し手として権利を主張した。


フランチャイジーは「黙示の理解」があったとして、書面同意を求めない慣行だったと主張した。


結果、フランチャイザーは担保付き店舗を抱え、ブランド価値の毀損と新オペレーター導入の遅れに直面した。資産関係が不明確となり、事業継続性と法的安定性を損ねた。


契約条項の改善による予防策

正式な書面同意なしには担保を設定できない旨を明確化すべきである。改善例は次の通り:


“The Franchisee shall not create or permit to subsist any charge, lien, mortgage, or other encumbrance (including any floating charge) over any of its assets used in connection with the Franchise without the prior written consent of the Franchisor. Any such encumbrance shall be void and of no effect, and shall constitute a material breach of this Agreement.” 

(フランチャイザーの事前書面同意なしに担保や負担〔浮動担保権を含む〕を設定または維持してはならない。違反は重大な契約違反とみなす。)


この改定で:

• 書面同意の必要性が明確化。

• floating charge の範囲が明示。

• 違反が重大違反として扱われ、解除・損害賠償の法的根拠を提供。


ただし、契約で登記済みの担保権を第三者に無効とすることはできない。登記された floating charge は第三者に効力を持ち続ける。しかし、契約上は重大違反として扱うことが可能である。


香港のような厳格な登記制度を持つ市場では、文言の正確性が極めて重要である。不明確な条項はフランチャイザーの資産管理権を失わせる恐れがある。


重要な示唆

曖昧な契約条項は高額な紛争を招く。香港のように登記が決定的な効力を持つ法域では、明確な条文こそがブランド保護の要である。floating charge の設定を明示的に制限しなければ、契約終了後も第三者の権利に拘束される恐れがある。


Katherine Chan Law Office は、ブランド価値と商業的整合性を守るため、フランチャイザーおよびライセンサー向けに精緻な契約を設計する。紛争発生前の予防こそ最善の防御である。


免責事項

本稿は情報提供を目的とし、法的助言ではありません。記載の事例は架空です。法令・規制は法域により異なります。具体的な助言を希望される場合は、Katherine Chan Law Office または法律専門家にご相談ください。本文に基づく行動について一切の責任を負いません。

 
 
 

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